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窓の外は一面の雪景色。なにもかもまっ白。白い絵の具をこぼしたみたい。ほんの少しのくもりもない白。
アイスクリームの白。わたあめの白。カキ氷の白。ティッシュの白・・・
でも、雪の白がいちばん好き。きらきらした白い色。
ぼくは、外に出た。まだ、だあれも歩いていないまっ白い地面。
その雪の中に、一歩、足をいれた。キュッと音がした。雪をふむ音。
ぼくのくつ跡がついた。
次は左足。また、キュッと音がした。ぼくは、ずんずん歩いていった。
キュッ、キュッ、雪の上にぼくの足跡がたくさんついた。
転ばないように、そっと、そしてまっすぐに。
すると、とつぜんぼくの足は引っぱられ、体は雪の中へ、ズボッ。
「冷たいなあ。だあれひっぱったの?」
顔にかかった雪をはらって、起きあがった。でも、だれもいない。
「へんだなぁ。なにかにつまずいたかな」
ふりかえるときれいに並んだくつ跡の横に、大きな穴があいていた。
ぼくの体がたおれた所。
「ちぇっ。足跡がきれいに並んでいたのに」
そうつぶやきながら、ぼくはまた一歩ふみだした。今度はそでを引っぱられた。またもや雪の中へ。バフゥ。
「だれかいるの?かくれているの?」
確かに引っぱられた。いたずらしているな。だけど、かくれそうな所なんて、ないよな。まわりは一面まっ白だもの。おばけかな。
ぶるっ。ぼくは身震いした。すると、
「くすくす、くすくす」
笑い声。とても小さいけれど、確かに聞こえた。どこにいるんだ。
「だれだ!あやまれよ。」
しーん。
「いたずらしたら、ごめんなさいするんだよ。知らないの?」
ぼくは、だれもいないそこにさけんでみた。
「ごめん、ごめん。ここだよ。いっしょに遊んでよ」
声のする方に顔を向けると、何か小さい虫が飛んでいた。虫?なんの?
そして、そいつが話しかけているらしかった。
虫かな?でも、日本語話すぞ。なんだろう?
「きみは何?虫?」
「ぼくは雪のぼう坊だよ」
そいつは、小人みたいだった。背中に羽が生えていて、飛んでいる。
そいつは、いたずらが大好きだと言った。
雪で玄関のドアをまっ白にしたこと。くつの中に雪を入れたこと。猫のミケに雪玉をぶつけたこと。たくさんの雪だるまを庭に作ったことなど、いろんなことが雪の坊のいたずらだった。
今日は、ぼくをおどろかしてやろうと思ったらしい。実際、ぼくが転ぶと楽しそうに笑っていたようだ。
ぼくたちは、すぐに友達になった。ぼくは、木の枝で雪に絵を描き始めた。雪の坊は、その絵に色をつけてくれた。黄色や赤色、灰色、桃色など。たくさんの色がまっ白い雪の上に流れる。
雪の上に動物園ができた。きりん・ぞう・さる・うさぎ・フラミンゴ・・・
雪の坊はとても喜んでくれた。白くまやペンギンなどは見たことがあると言った。ぼくは楽しかった。夢中で遊んだ。
だんだん夕日が沈んでいく。もうすぐ、山に太陽がかくれる。
雪の坊がうすく透き通ったような気がした。
「どうしたの?なんだか消えそうだよ」
ぼくはびっくりして、雪の坊に聞いた。
「お日様が沈むと消えるんだ。きらきらした雪の中でしか生きられないから」
さびしそうに、ぼくを見つめて雪の坊は答えた。
「また、会えるよね?太陽がのぼったら」
「うん、また会えるよ、きっと」
そういうと雪の坊はすうーっと消えていった。雪の上の動物園もいつのまにか消えていた。あたりはしんとして、とても静かだった。
今までのことが夢のように思えた。ぼくは、木の枝をにぎりしめると歩き始めた。まっ白い地面をジグザグに。キュッ、キュッと雪をふみしめて歩いた。
「またきっと会えるよね。だってぼくたちは友達になったんだから」
ぼくは山の中に吸い込まれていく太陽を見つめてつぶやいた。山は太陽の光をうけて、赤くきらきらと輝いている。もうすぐ、まっ黒い夜のやみに包まれる。
あれから数十年が過ぎた。ぼくは雪の坊に二度と会うことはなかった。
そして息子が、あの時のぼくの年齢になった。空から降りてくる雪をつかまえようと、手をいっぱいに広げている。
“きみにもいつか雪の坊と出会ってほしい。”
ぼくはそう思いながら、今年初めての雪の空を見上げた。
ちらちら舞い降りてくる雪は、あの時とすこしも変わらない。きらきらとした白い色、あたたかい気持ちがぼくを包む。ピュアな気持ちでいっぱいになっていく。
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