|
大きくなあれ
ぼくのうちに赤ちゃんがきた。なまえは“けんちゃん”。
今は体を大の字にして、ふとんの上で寝ている。すやすや。
とても気持ちよさそう。
ぼくもとなりに寝転んでみる。
ふかふかしたふとんとまっ白いシーツが、ぼくの体をやわらかく包んでくれる。
あったかいなあ。
ママに抱っこされているみたいで、とてもいい気持ち。
「うわぁ。助けて、つぶされるぅ!」
ぼくは重い岩に押しつぶされる夢を見ていた。
はっ、としておきると、ぼくの上にはけんちゃんがいた。
服を引っぱったり、かじったりしている。重いわけだ。
「けんちゃん!」
ぼくがこわい声を出してにらんでも、にこにこ笑っている。
はぁーとためいきが出てしまう。
けんちゃぁん、たのむよ。
ごきげんな時のけんちゃんが、ぼくは好きだ。
「あー」とか「ぶー」とか日本語にならないことばを話す。
ぼくに何かを伝えたいらしいが、ぜんぜんわからない。
まるで、うちゅうご宇宙語みたいだ。
そういえば、妹のなっちゃんも赤ちゃんの時は、宇宙人みたいだった。
さわるとぷよぷよしていて、引っぱるとむにゅーとのびたっけ。
けんちゃんはいも虫にもなる。
上手にハイハイが出来なくて、うでだけで前に進むんだ。
つかれると、あおむけにひっくり返る。
いも虫がわかるのかな。
ぼくもとなりで、けんちゃんのまねをしてみた。
うでが痛くなってやめた。
ぼくの体重では、ムリなようだ。
また、けんちゃんはかいじゅう怪獣にもなったりする。
気にいらないことがあると、大きな声で泣くんだ。
しばらくは止まらなくなる。
目にいっぱい涙をためて、これでもかというくらい泣き続ける。
ぼくは困ってしまう。
そんな時は、けんちゃんにおまじないをかける。
「けんちゃんはね。バナナが大好きほんとだよ。
だけどちっちゃいから、バナナはまだ食べられないの。
かわいそうね、けんちゃん!」
すると、歌が好きなのか、名前を呼ばれたからか、泣き止むんだ。
ちゃんと、わかるんだ。
「えらいね、けんちゃん」
ぼくは、けんちゃんの頭をやさしくなでなでしてあげる。
もう少し大きくなったら、ぼくの子分にしてあげるよ。
おもちゃもかしてあげるし、ケーキも分けてあげる。
外に探検しに行こう。
いっしょに遊ぼうね。
けんちゃん、早く大きくなあれ。
だけど、ぼくがけんちゃんとばかり遊んでいるとママは怒るんだ。
「あなたの兄弟はなっちゃんでしょ!」って。
ぼくにも弟がいればなあ。
「だれか、ジャスコで買ってきて!」
|