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尾花沢にて清風と云者を尋ぬ。
かれは富めるものなれども、志いやしからず。
都にも折々かよひて、さすがに旅の情けをも知りたれば、
日比とどめて、長途のいたはり、
さまざまにもてなし侍る。
涼しさを我宿にしてねまる也
芭蕉、「おくのほそ道」紀行中、
尾花沢の鈴木清風を訪ねる。


 元禄2年、俳聖松尾芭蕉は門人曽良を伴い、険路山刀伐(なたぎり)峠を越え、鈴木清風をたずね、尾花沢に十泊した。
 清風は当時、出羽国最上きっての豪商であると同時に、風雅を解する人物であった。「おくのほそ道」に、「かれは富めるものなれども、志いやしからず」、しかも旅人のこころもよく知っていて、幾日もとどめていろいろもてなしてくれたと書かれ、四句が書き並べられている。
まゆはきを俤にして紅粉の花
這出よかひやが下のひきの声
蚕飼する人は古代のすがた哉 曽良

芭蕉・清風歴史資料館
昔からそばの主役は「そば粉」

 寒暖の差が大きく霧の多い地方は、そばの栽培に適している。その点では寒暖の差が激しく、丹生川と朧気川が貫流する尾花沢盆地は、まさにそば栽培の好適地といえる。尾花沢のそば生産量は県内トップだ。
尾花沢の昼夜の温度差は大きいが、晴れた日の早朝には川霧が発生し、夜の冷え込みと日中の気温上昇との差を和らげる。秋そばの生育、結実期にこの朝霧が立つと、味、栄養とも優れたそば粉が穫れる。
とにかく長い麺

 尾花沢に、細めでしかも実に長く打たれた麺を出すそば屋がある。江戸と結ぶ羽州街道宿場町尾花沢に江戸仕込みの伝統が残っているのだ。
 長く細く打つのは、太ければ茹でるのに時間がかかり、その間にそばの栄養分が茹で汁に溶け出すからとも、風味を逃がさないように短時間でさっと茹で上げるためだとも云う。
 そしてそば打ちや茹でるのに使う水は、霊峰御所山を源流とする丹生川の雪解け水をたっぷり含んだ地下水を源流とした水なのだ。
羽州街道の宿場町として栄えた
尾花沢に残る職人気質

 多くの旅人が往来した宿場町尾花沢には、「そば切り振舞」や「手打ち」の古い伝統が息づき、職人たちによるそば打ちの様子は、ごく日常的な光景として人びとの暮らしのなかに溶け込んでいた。
 尾花沢そばは、よく吟味した地元のそば粉と最高の副材料を用い、調理の仕方も昔ながらの家伝を守りながら、決していわゆる手抜き仕事などはしない職人気質で供するそばであり、おのずから格調高いそばが出来上がる。